特定商取引法では、長期継続が前提となる7業種(エステ・パソコン教室・学習塾・家庭教師・語学教室・結婚情報サービス・美容医療サービス)について特定継続的役務提供という指定をして、様々な規制を定めています。
※美容医療サービスは特定商取引法の改正により平成29年12月1日より追加指定。
これら7業種の事業経営をする場合は、その規制に沿った契約書を整備し、法律に沿った運用を継続していかなくてはなりません。
エステティックサロン
「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が1ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
語学教室
「語学の教授」と定義されています。
高校や大学の入試対策としての英語教習は学習塾に分類され、英検等の資格試験の教習は語学教室に分類されます。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
家庭教師・通信指導
「入学試験準備や高校等の補習のための学力の教授で、学習塾等以外の場所で提供されるもの」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
学習塾
「入学試験準備や高校等の補習のための学力の教授で、小中学校・高校生等を対象にして、業者が用意する場所で提供されるもの」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
パソコン教室
「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に係る知識又は技能の教授」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
結婚情報サービス
「結婚を希望する者を対象とした異性の紹介」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
美容医療サービス
「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと」であって、次の5つに該当するもの
(以下、5つの方法が特定継続的役務に指定され、それ以外については適用除外)。
(1)脱毛
光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法
(2)にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化
光若しくは音波の照射の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
(3)皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減
薬剤の使用又は糸の挿入による方法
(4)脂肪の減少
光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
(5)歯牙の漂白
歯牙の漂白剤の塗布による方法(※朝日新聞でセラミッククラウンは除外と報道)
こうした事業内容で契約期間が1ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。
通常は消費者が自らの意思で店舗を訪問して購入をした契約はクーリングオフの対象外となります。
しかし、特定継続的役務の場合は、消費者が自ら店舗を訪問して契約した場合でも、クーリングオフ対象になります。
そのため、契約書にはクーリングオフ告知文書(契約書)を交付した日から8日以内であればクーリングオフが可能であることを明記する義務が生じます。
この記載義務を怠ると、契約書交付から9日以上を経過した場合でもクーリングオフ対象となってしまうので注意が必要です。
特定継続的役務については、消費者が理由を述べることなく自由に解約をする中途解約に応じる義務が定められています。
また、中途解約をする場合の損害賠償金の上限も定められており、この基準を超える請求は認められません。
役務提供開始前の解約 | 役務提供開始後の解約 | |
---|---|---|
エステティック | 2万円 | 提供された役務の価格と、2万円または契約残額の10%のいずれか低い額との合計 |
語学教室 | 1万5千円 | 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計 |
家庭教師 | 2万円 | 提供された役務の価格と、5万円または1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額との合計 |
学習塾 | 1万1千円 | 提供された役務の価格と、2万円または1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額との合計 |
パソコン教室 | 1万5千円 | 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計 |
結婚情報サービス | 3万円 | 提供された役務の価格と、2万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計 |
美容医療サービス | 2万円 | 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計 |
特定継続的役務提供の書面交付義務
特定継続的役務提供の契約では、契約締結以前のサービス説明時に契約の概要を記載した書面(概要書面)と、契約締結時に契約内容を明らかにする書面(契約書)を交付する義務が定められています。
この概要書面と契約書には、商品名・料金・支払い方法・契約期間・クーリングオフ告知文・中途解約の基準などの情報を記載することが義務付けされています。
これらの記載義務事項が欠落すると特定商取引法違反となり、その点を根拠に事業者にとって不利な時期に消費者側から契約解除の主張を許すリスクを残します。
以上のように、特定継続的役務提供の契約については概要書面と契約書の整備が必要不可欠であり、特定商取引法の記載義務事項を確実に記載しておく必要があります。
当行政書士事務所では、記載義務事項を網羅した上で、事業に特有なリスク予防を図った契約書雛形を販売しております。
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