電話勧誘販売(アウトバウンド・マーケティング)は、消費者が主体的に勧誘の要請を行うものではなく、事業者からの電話により勧誘を受けることから「不意打ち性」のある取引とされ、特定商取引法によって規制や解約のルールが定められています。
そのため電話セールスの事業を行う場合には、特定商取引法に準拠した契約書面を用意する必要があります。
また、例えば通信販売であっても、1度しか取引の無い顧客や1年以上の休眠顧客に電話セールスをする場合には、同法の電話勧誘販売の規制を受けるので契約書面を交付する義務が生じます。(1年以内に2回以上の取引がある顧客については同法の規制は受けません。)
※通販ビジネスでも、アップセル・クロスセルの営業については電話勧誘販売とみなされ、電話勧誘販売契約書の交付が必要となります。
このようにアウトバウンドの営業には法定の契約書面の整備が必須となります。
その電話勧誘販売の契約書面には以下の事項を漏れが無いように記載しなくてはなりません。
これらの事項に漏れがある場合は特定商取引法の交付書面の不備扱いとされ、クーリングオフ期間が経過した以後でも解約が可能とする解釈が通用しています。
販売事業者としては、そのような不測の事態を避け、適法に事業を遂行するためにも同法に沿った契約書を用意する必要があります。
<契約書面の記載義務事項>
・商品(権利・サービス)の種類
・商品(権利・サービス)の価格
・クーリングオフに関する事項
・事業者の名称、住所、電話番号、代表者氏名
・契約担当者の氏名
・契約を締結した日付
・商品の名称、商標、製造者名
・商品の形式があるときは、その型番
・商品の数量
・瑕疵担保責任の特約があれば、その内容
・契約解除の特約があれば、その内容
・その他に特約があれば、その内容
当事務所で販売している電話勧誘販売契約書の雛形(編集可能なWORDファイル)では、この記載義務事項を網羅しており、電話勧誘販売事業の契約書としてすぐにご活用頂けます。
契約書に記載すべきクーリングオフに関する事項の一部(概要)を以下に記載します。
<クーリングオフに関する法定記載事項の概要>
(1)電話勧誘販売に該当する取引については、契約書面の交付日から起算して8日以内に、消費者が書面により契約の解除の趣旨を事業者に通知した場合は、その通知書面を発送した日(発信主義)をもってクーリングオフによる契約解除が成立すること。
※1 事業者が契約書面を交付していない場合は、クーリングオフの起算日は進行せず、8日間経過後もクーリングオフが可能となります。
※2 契約書面の重要事項に記載不備があると、契約書面の交付をしていない場合と同様の扱いとなります。
(2)事業者が消費者に対して、虚偽の説明をしたり、威迫して困惑させクーリングオフを妨害した場合は、法定クーリングオフ期間の8日間が経過した以降であってもクーリングオフができること。
(3)クーリングオフ妨害があった場合は、特定商取引法の附則に定められた様式のクーリングオフ妨害の解消のための書面を事業者が交付し、その交付日から8日間はクーリングオフが可能であること。
(4)クーリングオフにより契約解除となった場合は、事業者は消費者に対して違約金や損害賠償金などの請求をすることができないこと。
(5)クーリングオフによる商品の返品送料など原状回復に要する費用は事業者が負担する義務を負うこと。
※サービス(役務)と権利の販売については、返還が不可能のため、消費者は返還をする必要がなく、その損失は事業者が負担することになります。
(6)クーリングオフ期間中に消費者が商品を使用して利益を得た場合でも、その契約がクーリングオフされたときには、事業者は商品の使用済み分の料金を請求することはできないこと。
※クーリングオフ期間中の商品使用による価値減耗分については、その損失は事業者が負担することになります。そのためクーリングオフ期間内には、商品・サービス・権利の提供を自粛するのが適切です。
電話勧誘販売についての契約書雛形です。
本契約書雛形は全10条(A4用紙2枚)で構成しています。
また、特定商取引法による電話勧誘販売規制の重要事項について説明をする解説書(PDF)もセットにしておりますので、同法の規制についての理解も深めることができます。
※2022年6月1日施行の特定商取引法の改正(クーリングオフ通知の電磁的手段対応)について反映しております。
<解説書(PDF)の目次>
・特定商取引法の規制について
・勧誘目的の明示義務と再勧誘行為の禁止
・書面の交付義務
・禁止行為
・クーリングオフについて
・「電話勧誘販売契約書」雛形の逐条解説
以下に雛形の概要を記載します。
※電話勧誘販売は特定継続的役務提供の契約とは取引の態様が異なりますが、特定商取引法の規制対象となります。
※電話勧誘販売の規制は、訪問販売の規制と共通する事項が多く、契約書雛形も訪問販売契約書と類似しております。
売買契約の成立
販売事業者による売り渡しの意思と買主による買受の意思が合致した取引であることを明示し、売買契約が成立することを確認します。
売買する商品の表示
販売する商品の品番や数量、価格を記載し、販売総合計額を表示します。
商品のメーカー名・商品名称・品番・数量・金額は特定商取引法の記載義務事項となっております。
売買代金および配送料
商品の販売代金と配送料について、その支払方法を指定します。
納入期限と所有権移転
商品の納入期限を記載します。
商品の所有権は、商品引渡し前までは売主に帰属し、引渡しと代金支払いを終えた以後は買主に帰属します。
品質保証
商品の品質保証については、製造会社の保証規定に準拠することを確認しています。製造会社の保証期間経過後は有償にて修理対応を行うことも明示しております。
個人情報保護
契約者の情報を基にして、セールス情報やサービス情報のDM等を送ることもあるかと思います。
個人情報保護法の規制を考慮して、本契約書では情報提供の目的明示(サービス情報や営業情報の提供)をしており、個人から請求があった場合は名簿からの削除やDMの停止をすることも明示しています。
クーリングオフ
特定商取引法では、個人に対して商品を販売する際に、電話によって勧誘した場合は、クーリングオフの対象となると定めています。
そこで、同法の規定に従って契約書を発行した日から8日間はクーリングオフができることを明記しています。