訪問販売や電話勧誘販売(テレフォン・アポイントメント・セールス)は2019年の消費者契約法の改正によって新たな取消権が導入されることから、それを理解せずに勧誘を続けると契約者から取消をされるリスクがより高くなりました。
法定記載義務事項を満たした契約書を交付し、丁寧でわかりやすい説明を行い、お客様に説明を理解してもらったことを証するアンケート書面の用意など、販売事業者のコンプライアンス対策について解説します。
訪問販売・電話勧誘販売のアウトバウンド・ビジネスでは、お客様とダイレクトな接点を持つことができる一方で、その勧誘には「不意打ち性」があることから特定商取引法で「勧誘の目的を告げること」や契約書を交付することが義務化されています。
これに違反した場合には、事業者は契約がクーリングオフで取消になったり、行政処分の対象になったりするリスクを負うことになります。
また、勧誘時に販売員が過剰な効果を標ぼうして契約をした場合には、特定商取引法や消費者契約法の不実告知として扱われ、これも取消の対象になります。
そのような契約の取消リスクを予防するために、勧誘は誠実・丁寧に行い、契約書は法的な不備が無いように作成しておく必要があります。
アウトバウンド・ビジネスはこうしたコンプライアンス順守が必須ですが、2019年6月15日に施行の消費者契約法の改正事項では、更に以下のような新しい取消権が導入されました。
<新たな困惑型の取消権|消費者契約法>
・願望の実現に抱く過大な不安をあおる告知(4条第3項第3号)
・恋愛感情等の好意の感情に乗じた人間関係の濫用(4条第3項第4号)
・加齢又は心身の故障による判断力の低下を利用した不安をあおる告知(4条第3項第5号)
・霊感等合理的に実証することが困難な特別な能力による知見を用いた告知(4条第3項第6号)
・契約締結前に債務の内容を実施し、原状回復を困難にすること(4条第3項第7号)
・契約締結前に事業活動が特に実施したものである旨及び損失の補償を請求(4条第3項第8号)
・不利益事実の不告知(4条第2項)について要件緩和(故意の要件について、重過失を追加)
これらの規定によって「若者に対して、このままでは結婚できないなどと不安をあおる告知」や「高齢者に対して、このままでは老後資金が尽きて生活できなくなるなどと不安をあおる告知」をした場合など、消費者を不安に追い込んで契約につなげるような勧誘方法は取消対象になることが明確になりました。
この新しい取消権は、特定商取引法の法定契約書面を充足していたとしても、消費者がこれらに該当する勧誘行為があったと主張する場合には、その取消を防止できるものではありません。
こうした取消権が濫用されるようなことがあれば、経営へのダメージは大きなものになります。
そこで販売事業者としては、正確な説明による勧誘を徹底し、契約をしたお客様に対しては「お客様アンケート(満足度調査)」を実施し、勧誘内容が適正であったことを記録として残すという対策が有効となります。
こうした「お客様アンケート」を実施してチェックリストに記入をしてもらうと、営業担当者も適正な勧誘をする意識が高まり、お客様も契約への納得感が得られるという効果も期待できます。
ただし、アンケート(チェックリスト)の内容が的外れであった場合には、従業員とお客様に余計な手間を増やすだけで意味はありません。
特定商取引法の規制内容や消費者契約法の改正内容について、お客様にも営業担当者にもわかりやすい形で文書化する必要があります。
当行政書士事務所では、特定商取引法・消費者契約法のポイント、改正の要点をまとめた解説書(PDF)と「お客様アンケート(チェックリスト)」の雛形(WORD)を作成しており、下記リンク先ページにてその概要を掲載しています。
訪問販売・電話勧誘販売のための消費者契約法対応の解説書とお客様アンケート雛形
アウトバウンド・ビジネスを採用されている事業者様は、リスク管理の観点から上記リンク先ページをご参照下さい。