通販やネットビジネスについては、通販だからクーリングオフや契約書交付に対応する必要はないという従来までの認識をアップデートしないと、手痛い失敗をするかもしれません。
2023年(令和5年)6月1日施行の特定商取引法の政令・省令改正によって、アップセル・クロスセルの販売やSNSでの勧誘については、クーリングオフ対応や契約書交付の対象になりました。
インターネット通販サイトや情報商材・各種コンサルティングなど、ウェブで販売をするビジネスは、原則的には特定商取引法の通信販売に該当し、クーリングオフ制度や契約書交付義務の対象外になっています。
(特定商取引法の通信販売ルールでは、返品等の取引条件の適正表示の義務はありますが、消費者に契約書を交付する義務はありません)。
ただし、例外として、SNSを介した勧誘行為や消費者をウェブから電話に誘導して勧誘するアップセル・クロスセルの販売を行った場合には、特定商取引法の訪問販売や電話勧誘販売に該当するとみなされ、販売事業者はクーリングオフや契約書交付の義務に応じなくてはならなくなります。(その義務に対応しない場合には、業務停止処分や罰金、契約取消といったペナルティ対象になります)。
インターネット・ビジネスを行う事業者にとって影響の大きな改正点は、以下の2つです。
(1)ウェブから電話に誘導するアップセル・クロスセルに電話勧誘販売規制を適用
特定商取引法の施行令(政令)第2条第1号
「広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等を利用して」、その広告を見た消費者に契約の勧誘をすることを告げずに電話をかけさせる行為(いわゆるアップセル・クロスセル)については、法第2条3項の電話勧誘販売に該当することが規定されました。
そうしたビジネスモデルでは、電話勧誘規制に準拠してクーリングオフに対応すること、契約書の交付が求められます
※アップセルとは、商品やサービスをより上位の高価なものに移行してもらう営業活動のことをいい、クロスセルとは、関連するものを組合せで購入してもらう営業活動のことをいいます。
(2)SNSを利用した勧誘に訪問販売(アポイントメントセールス)規制を適用
特定商取引法の施行規則(省令)第3条1号~3号
ショートメール、電子メール、SNSを利用したアポイントメントセールスは法第2条1項2号の訪問販売に該当し、訪問販売規制を受けることになりました。
訪問販売規制に準拠したクーリングオフ対応や契約書の交付が求められます。
※アポイントメントセールスとは、販売目的を隠し、電話などで事務所や店舗に呼び出し契約させる商法のことです。
このようにホームページやSNSの広告で消費者に電話をかけさせるように誘導し、アップセル・クロスセルの手法で営業を行う行為については電話勧誘販売規制が適用されます。
ショートメール、電子メール、SNSを利用して消費者を事務所や店舗等に呼び出す行為については訪問販売規制が適用されます。
この特定商取引法の規制では、8日間のクーリングオフ制度に対応すること、同法で指定された事項について記載された契約書を原則として紙媒体で交付することが定められており、違反した事業者は業務停止処分や罰金・懲役といった罰則、契約書を交付しない場合の消費者の契約取消権という問題が発生することになります。
特定商取引法の電話勧誘規制と訪問販売規制は、ほぼ同じ内容となっていますが、アップセル・クロスセルの場合は電話勧誘販売の契約書、SNS等で呼び出すアポイントメントセールスには訪問販売の契約書を交付することが事業者に求められます。
これらの対象となるビジネスをされている場合には、以下の契約書を用意して消費者に交付するようにしましょう。
・アップセル・クロスセルのビジネス:電話勧誘販売契約書
・SNS等を利用したアポイントメントセールス:訪問販売契約書
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